【 #アップルノート コラム】 クルマ社会からスマホ社会への変革の6年と、iPhone Xが取り組むべき挑戦とは

この原稿は、私が米国に引っ越して、ちょうど6年がたった日に書いています。

6年前の今日、11月10日の23時半頃にバークレーのアパートに到着しました。軽く荷ほどきしたら0時を回ってしまい、すでに近所のスーパーは閉店したあと。到着早々、何も食べるものにありつけなかったことが、最初の思い出です。東京で長らく暮らしてきましたので、夜中お腹が空いて困る、ということはなかったのです。

その翌日行った先はApple Storeでした。iPhone 4Sを契約し、1回線あたり400ドルのデポジットまで払い、回線が開通してセットアップを終えた手にした瞬間の安心感といったら、それはそれは心強いものがありました。メールやメッセンジャーの新着通知が届き、Google Mapで慣れない街を自由に探索でき、分からないことはすぐにウェブで調べられるようになりました。

実用面以上に安心感を覚えたことに、驚きがありました。日本でケータイを使い始めたモバイルネイティブ世代なんだという実感を感じたのは、異国の地についてケータイを契約したときが初めてでした。それまで、ケータイがある事が当たり前すぎたのでしょう。

それからの6年間は、アメリカにおいて、スマートフォンが社会のインフラとなって、様々な問題が怒濤の勢いで解決されていく、そんなスマホ社会への移行が顕著な期間だったとふりかえることができます。

日本でもUberなどがシェア経済として紹介されますが、Uberは新しい経済を作り出す以前に、米国の都市の脆弱な交通事情という問題を解決するアプリだったのです。

確かに2011年の感謝祭の際、交通事情の悪さを体感しました。バークレーから50km南にあるシリコンバレーの知人の家へ交通機関で向かおうとしたら、車で1時間でほどの場所に4時間もかかったのです。電車は遅れて乗り継ぎに合わず、1時間ロスする。駅前にはタクシーなんて止まっておらず、電話しても一向に迎えに来ない。そんな経験から、はじめは持つつもりがなかったクルマを、すぐに探して手に入れたわけです。

またApple Payを皮切りに、スマホを活用したモバイル決済が導入されました。こちらもクレジットカードで頻発するスキミング被害や不正利用の防止という問題解決を行うため、という強いインセンティブが、カード会社とユーザーに働いた結果でした。クレジットカード会社がAppleに決済ごとに手数料を払ってでも実現させた仕組みになっていて、Appleに支払う手数料の方が、不正利用の補償や早期発見のためのシステム開発のコストより安かった、ということです。

Uberにしろ、Apple Payにしろ、日本への上陸は遅れ、上陸しても諸外国ほどのインパクトを与えていないとパターンが多く見られます。そのことを見つけては「日本はテクノロジーへの適応が遅い」と嘆く意見も見られますが、そうではない、と思います。日本には、毎日のように困っている、スマホで解決しなければならなくなった問題が、小さいか、存在していないだけです。

本当は、「スマホ社会」、つまりスマートフォンによる問題解決を行う社会ではない日本の方が、社会インフラがきちんと整い、充実している環境といって良いはずです。

しかし、世界を見渡せば、そうした環境の方が希であり、スマホが社会インフラを担う、担わなければならない都市や地域の方が圧倒的に多く、結果的にアメリカを含むそれらの国々の方が、スマホによる社会の問題解決により真剣に取り組み、投資も行われてきたのが、この6年間だったのではないでしょうか。

そんなスマホ社会に対して、積極的に新たなサービスやアプリ開発環境を作り上げてきた中心的な存在であるAppleが、iPhone 10周年のタイミングで登場させたiPhone X。このデバイスとスマホ社会が、今後どのような変化を作り出すのか、考えてみたいと思います。

【目次】
iPhone Xに対して、最も懸念していることとは
iPhone X不況
クルマ社会をもたらした陰謀
クルマ社会におけるクルマ、スマホ社会におけるスマホ
スマホ社会におけるiPhone Xがすべき挑戦とは?

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